2018年9月3日から、私は「株式会社/特許業務法人Toreru」(以下 Toreru。https://toreru.jp)に移籍し、業務を開始します。
以前の職場も含め、私は運良く周りの方々に恵まれたので、8月一杯はお休みをいただき、いろいろなことを考えるよい時間を取ることができました。
いよいよまた新しいステージがはじまるので、なぜToreruに移ることにしたのか、書いておきたいと思います。
そもそも自分は何をしたいのか
働く場所うんぬんの前に、まずは、自分が人生において何をしたいのか、何を軸にしたいのか、どんな価値観かということ。
それを整理する必要がありました。
結論からいうと、
「個性に気づき、深化させる」
そんなことを大事にしていきたいと思いました。
これは、自分自身についてもそうだし、他の人や組織も、そうできたらいいだろうなと。
そして、これを実現しやすくするため、自分ができること、やりたいことは何だろうと考えたら、
知的財産 × ブランド × Accessibility (利用しやすさ、身近さ)
この掛け算で、誰かに少しでも貢献できることがあるのではないかと考えました。
個人であれ組織であれ、誰にも邪魔されず自分の「個性」にフォーカスできれば、それぞれの強みが活き、結果として社会の発展の大きな原動力になると思っています。
私は、「自分にしかできないこと」が好きです。
他人より「優れた」ことがやりたい、という意味ではありません。
もちろん、「優れた」ことであればより良いですが、自分の根っこから染み出した個性が表れていれば、他の誰にも替えのきかない、「自分にしかできないこと」になります。
逆に、「優れた」ことであっても、そこに個性が表れていなければ、同じくらい優れた他の人がいればそれでいい。
世界にはたくさんの人いて、たくさんの組織があります。
せっかくたくさん存在しているのなら、みんなが「自分にしかできないこと」をすれば、その分だけ世の中のちからになる。そんな気がしています。
このように考えているのは、
私が幼少期から良くも悪くもマイペースで、自分の世界をつくりやりたいことに没頭し、まわりの人も、たまには苦言をいいながらもそれを寛容なこころで許してくれ、そのおかげで、自分がそれなりに満足できる結果が出たり出なかったりしながらも、おおむね楽しく幸せに過ごすことができた、と今振り返って思えていること。
学生時代からたまたま音楽に触れる機会に恵まれ、自分のオリジナリティと世間の評価との関係、競技と商売とアートとの矛盾、「自分」がやることの意味、他者と共存して何かを生み出すことの意味、そんなことを考えるきっかけを与えてくれる出会いがあったこと。
こんなことも多かれ少なかれ影響していることでしょう。
私は、これまで知的財産、特に、商標やデザイン(意匠)を守る仕事をしてきました。
何のためにこれらを守るかというと、みなさんが生み出したすばらしいデザインや、だれかのためになるら活動して得た信用を、まわりに害されず、より活かせるようにするためです。
よく考えられた商標やデザインというのは、自分が誰かに伝えたいこと、それの象徴であり、結晶です。
自分が誰かに本当に伝えたいこと、これは自分の内面から湧き出るものです。
だけど、自分の内面は、伝えたい「誰か」にはすぐには届きにくい。
ちょっと曖昧な形にはなってしまうかもしれないけれど、商標やデザインは、これを伝えるツールになってくれます。
ブランディング。
これは「ブランド」をつくり、育てていくことです。
ブランドが何かをひとことで正しく説明するのは私にはむずかしいですが、本当のブランドとは、言うなれば「まわりの人たちに少しわかってもらえた自分」のようなものだと考えています。
強くて良いブランドをつくることは、「偽らない自分を、知ってほしい人たちがなるべく深く知ってくれて、願わくば好きになってもらえる」、そんな状態をつくることのような気がしています。
商標やデザインは、ブランドをつくり、育てていくために少し役立ってくれます。
私はブランドというものをこのように考えているので、ブランドは、個人であれ組織であれ、本来みんなが持てるもの、というかみんなが今より少し気にするようになると、それぞれが個性を出し、それをまわりが認め、しあわせな人が増えるようなイメージがあります。
だけど、ブランドとか、それの一要素である商標や意匠って、少し近寄りがたいと思う人もいるようです。
これは、これまでの仕事経験の中で私が少なからず感じてきたことです。
少し近寄りがたい理由は、ちょっと世に出ている情報が小難しかったり、必要以上に権威的に感じさせる方法で伝えられていたり、活用するためのコストが高かったり、誤解され本当の価値が理解されていなかったり、単純にメンドくさかったり、いろんな理由があると感じています。
ただ同時に、このように「近寄りがたい」と思ってしまう人や組織にこそ、知的財産やブランドについて今より少し理解を深め、これらと仲良くなり、自分の個性を存分に活かしてほしいとも感じています。
そういう人や組織が、社会をつくる大部分だからです。
そして、「近寄りがたい」理由をつくってしまっているのは、私のような知的財産やブランドに関わる人の力不足でもある、と私は思っています。
いくらよい知見やサービスを提供する能力や用意があっても、それに手が届く人が限られていれば、まだまだ不十分です。
だから、もっと身近なものにしたい。
そんな気持ちがあります。
私にとってのToreru
私がこの度移ることをきめたToreruは、「知的財産 × テクノロジー」の可能性を追い求めていく、新しいタイプの特許事務所、だと私は思っています。
今回はToreruの紹介として書いているわけではないのであまり細かなことは書きませんが、
テクノロジーの力で、人間である専門家の力を最大限に活かし、より良質な知財サービスを、これまでになく身近にすることを目指している、と私は感じています。
そう。
私が進めていきたいと考えている
知的財産 × ブランド × Accessibility
のうち、
知的財産 × Accessibility(テクノロジーによる)
の部分がピタリと一致しているのです。
さらにいうと、より人間的な部分を活かすためにテクノロジーを活用するという姿勢も、個性やブランドという人間的な概念との親和性があると感じています。
私のちからは限られていますが、そんなToreruに、私が「掛け算」になれることがひょっとしたらあるのではないかと、そう勝手に思ったわけです。
Toreruのちからも借りながら、
知的財産 × ブランド × Accessibility
を進めていきたいと思います。
いずれせよ、自分がやっていきたいことの半分以上をすっぽり含む場所で、新たな一歩を踏み出せることは、とてもしあわせなことなのだと思います。
それを選ばせてくれたいろんな人に、感謝しなければなりません。
本当にどうもありがとうございます。
Toreruに移った理由、と題しておきながら、ほとんどが、自分がどんなことをしていきたいかという話になってしましたが、たぶんそれでいいのかな、と思っています。
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