トランペットを吹くためにアンブシュアに力を入れる必要はない

ここ最近、トランペットの不調に苦しんでいる。

おそらくその原因は、長い間(かれこれ5年くらい?)プラクティスミュートばかりで練習をしていたことではないかと踏んでいる。

「プラクティスミュートで練習しすぎると、調子を崩す」とはよく言われるが、こんなに長くプラクティスミュートばかりで練習をしていたら、そりゃあ調子を崩すわけだ。

なにせ、ここ数年あまり演奏会なども出ておらず、家ではオープンでは気軽に吹けないので、オープンで吹く機会はせいぜい月一回のアドリブレッスンの日くらい。

そうすると、家でミュートで練習しているときは調子が良くても、いざオープンで吹くとなった時に、

  • 音が詰まったような感じになる
  • 吹奏時に「適度な抵抗」が感じられない
  • すぐにバテる
  • 高音域が出ない

などの状態に陥って、その状態に困惑し、メンタルがやられて、さらに結果が悪くなる、という負のスパイラルに突入することになる。

プラクティスミュートを付けると、吹奏時の抵抗が通常時よりもかなり大きくなる。

それに慣らされた身体で急にオープンで吹くと、無意識に身体に染み付いている「想定の抵抗」よりも実際に受ける抵抗が小さく、そのため出そうとする音が鳴らず、それに対して無意識に唇にテンションを加えて自分で抵抗を作ろうとして、上記のような結果になってしまうのだろうと考えている。

かれこれ10年を超えてしまったトランペット歴の中で、何度も似たような経験はしてきたが、今度ばかりは酷く、最もストレス無しで吹けるはずのG(ミドルC(いわゆるチューニングB♭)の下のG(実音F))の音ですら、「ドッペル(ダブルバズ)」が起こる始末。

さすがにこれはやばい。

本気でそう思った。

 

やるべきことは「原因の特定」、そして「原因の排除」である。

まず、たぶん原因であろう「プラクティスミュートでの練習」は、しばらくの間一切しないことに決めた。

ただ、もしこれが根本原因だったとしても、「プラクティスミュートの感覚に慣らされた身体」は、そう簡単に戻るものではない。

よって、不調もすぐ解決には至らない。

実は、久しぶりの本番の機会が間近に控えているから、ある程度即効性のある対症療法的解決策も講じなければ・・・

ということで、マウスピースを「自分が使える(だろう)範囲で最小の内径のマウスピース」に変えてみた。

だが、これはもはや「気持ちの問題」くらいのものでしかなく、(自身ほか多くの人が経験済みのとおり)大して解決にはならなかった。

そこで、「ppでのロングトーン」などの、不調の際に(もちろん不調の際でなくても)有効といわれている練習法も積極的に取り入れ、問題の解決を試みた(願った)。

だが全然良くなる気配がない。

本番が日に日に近づいてくることもあり、焦りと、八方塞がり感に打ちひしがれた私は、前述の「月一回のアドリブレッスン」において、たまたま先生とのマンツーマンになった日があったので(いつもはグループレッスン)、

「実は・・・」

と、アドリブのレッスンはそっちのけで、先生に悩みを相談することにした。

アンブシュアを作ってはいけない。アンブシュアは勝手に作られるのだから。

やっと本題ではあるが、

「アンブシュアを作ってはいけない。」

こう言葉にすると、あまりにも簡単すぎて、そして、この言葉自体は「自分もとうの昔から知っていた」ので、とても複雑な気持ちになるのだが。

これが今回言いたいことの全てであり、

此度の問題の解決策の全てである(と今は信じている)。

ただ、やはり、単に「知っている」のと「本当にわかっている」のとでは、大きな差がある。

自分は「本当にわかってい」なかった、ということなのだろう。

 

さて、私の悩みを聞いた原朋直先生は、問題解決の「ヒント」になるかも、ということで、一つのメソッドを示してくれた。

そのメソッドとは、次のようなものである。

  1. まず、Gの音(ミドルCの下のG。別にこの音でなくても良いが、低音域の音。)を、口に力を入れず、ロングトーンする
  2. 次に、そのGの音で幅の大きなビブラート(唇で音程を変化させるビブラート)をかけていく
  3. そのビブラートを拡大するような感じで、そのGとミドルCの間で「シェイク」をする(なるべく速く)

 

早速、その場でこのメソッドにトライしてみる。

だが、うまくシェイクがかからない。

そもそも、前述のようなコンディションなので、1の時点で、全くいい音が出ていない。

先生は、このメソッドについて、

「これは、唇がフリーな状態(理想の状態)になっているかどうかを確認するために良い方法の一つです。」

「唇に余計な力が入っていると、これはできないですからね。」

と説明していた。

が、正直に言うと、一度目のトライの後、このメソッドの効用に対して若干の疑念を感じてしまった。

なぜなら、自分としては、唇に音を出すための必要最小限の力しか入っていないと思っていて、それでも上手くできないからだ。

私の一度目のトライを聴いた先生は、「唇に全く力を入れないで、もう一度やってみてください。」と言った。

半信半疑ながらも、(どうせ今もまともな音が出ていないので)今度は本当に文字どおり「全く」力を入れないでやってみた。

「全く力を入れない」とはどういうことかというと、

普通に閉じた唇をマウスピースにただ接触させて、アンブシュアを作ろうとせずにそのままただ息を入れる

ということだ。

本当に全く作為的な力を入れずに吹いたので、いつもと吹いた時の口の感覚が全く違い、変な感じがした。

しかし先生は、

「さっきより音が柔らかくなりましたよ。」

と言った。

自分としては、本当に吹いた感覚がいつもと違って変な感じがしたのだが、確かに、先生の言うとおり、出た音が変わったように自分でも感じた。

それでもまだ慣れていないせいか、一度目より「若干」音が良くなった程度。

正直、今までの吹き方で調子を崩す前の方が、良い音が出ていた。

それに、ミドルCの下のGの音である。ある程度どんな吹き方だって普通に出る音域だ。

まだ戸惑いながらGの音をロングトーンする私に、先生はさらにこう言った。

「その状態のまま、上のG(ミドルG)まで半音階で上がっていってみてください。」

やってみた。

この時も本当に口には「全く」力を入れない。

少なくとも、入れようとはしない。

ただ息の「圧力」(量ではない)を上げていくだけ。

その結果、

柔らかい音で、楽に(丹田にだけ力が入っている感覚で)、ミドルGまでの音が出たではないか。(とても小さな音ではあったが)

これには「驚き」を伴った。

その「驚き」は、たぶん、本当に「全く」アンブシュアを作ろうとしなくても(良い音で)音高を上げることができるという、その純然たる事実を、単なる知識ではなく、実体験したことによるものだった。

この時ようやく、知識としてならとうの昔から知っていた、

「アンブシュアを作ってはいけない。アンブシュアは勝手に作られるのだから。」

という言葉(考え方)の意味を、理解できたように感じた。

このレッスンの後、これからは「アンブシュアを作る」ことは一切しないと私は固く心に決めた。

これまでも一時的にこのような試みをしたことはあったと思うが、今の状態まで吹けなくなったことはたぶんなかったから、中途半端に試して、「やっぱり今までの吹き方の方が良い」と思って終わったのだろう。

 

今日現在、このレッスンから約1週間が経過した。

まだ短い期間ではあるが、問題が(根本から)解決しそうな気配が見えてきた。

このまま「アンブシュアを作ろうとせず」練習し続け、本当に解決に至れば、またシェアしたいと思っている。

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ブランド弁理士。「ブランディング × 知財」を探求・推進しています。

株式会社Toreru/特許業務法人Toreru のCOO(最高執行責任者)兼パートナー弁理士。(一財)ブランド・マネージャー認定協会1級資格&認定トレーナー。日本ブランド経営学会運営委員。日本弁理士会所属。

株式会社アルバック知的財産部にて、企業目線からの知的財産保護に従事。その後、秀和特許事務所にて、商標・意匠分野のプロフェッショナルとして、幅広い業界のクライアントに対し国内外のブランド保護をサポート。2018年9月より、株式会社Toreru/特許業務法人Toreru に移籍し、2019年1月より現職。「知財の価値を最大化させる」新しい知財サービスをつくっている。 | Linkedin | メールはこちらへ

April 2009 - August 2012 株式会社アルバック 知的財産部 | ULVAC, Inc.

September 2012 - August 2018 秀和特許事務所 | IP Firm SHUWA

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